【開催レポート】講座「良い練習、悪い練習~読譜・メンタルトレーニング編~」(深谷直仁先生)
2012年08月04日(土)
夏本番を迎えた7月27日、巣鴨の東音ホールで深谷直仁先生によるセミナー「良い練習、悪い練習~読譜・メンタルトレーニング編~」が開催されました。外気は午前から30度を上回る暑さにも関わらず、この日も多くの受講者が参加しました。
「『練習』はなぜ必要かといえば、人間は"忘れる"生き物だからです」とセミナーを開始した深谷先生。「練習には決まった方法はなく、手探りで創作していかなければなりません。そのためには一人一人の生徒に適したテンポや、反復練習すべき箇所や回数を考えさせ、自分の力を引き出させるように導くことが大切です。練習は『音楽表現』、『テクニック』、『読譜』という3つの側面から考えることができると思いますが、今回はその中の『読譜』について考えてみます」とテーマを説明されました。
この日、深谷先生が実践曲例として用いたバスティン教材は、バスティン・ピアノベーシックス「ピアノ」3・4、「ファーストピアノレパートリーアルバム」、「はじめてのソナチネ」。そしてトンプソンやブルクミュラーの練習曲も用いながら、具体的にお話を進められました。
「読譜とは、音を機械的に読むことではなく、言葉や文章を読むように音楽の内容を読むこと」であると深谷先生は考え、曲のアナリーゼを行いながら譜読みを進めることで、楽譜上に書かれていることはすべて意味のある音列として読むことができるようになると主張。それによって最初から音楽表現をも優先した練習ができ、音それぞれの意味がわかっているために記憶(暗譜)も早まるとのこと。
"音楽は、マーチ、ソング、ダンスのどれか"であるといったカバレフスキーの言葉も紹介されながら、ベートーヴェンのソナチネ、モーツァルトのメヌエット、ブルクミュラーの「アラベスク」などのフレーズやリズム構造、和声の捉え方、カデンツやゼクエンツを利用して全調で部分演奏させる応用練習などを紹介されました。
また練習時間を効率よく使うために、練習範囲の絞り込みや目標設定の大切さについてもお話され、生徒に強すぎるストレスをかけずに、自立した練習を可能にする工夫についても語られました。
セミナー終盤には、本番に強くなるための「メンタルトレーニング」についても述べられました。「先行逃げ切り型」、「追い込み型」といった生徒のタイプとそれぞれの特性、不安の解消法や本番直前の呼吸・動作・視線についてなど、深谷先生の指導のご経験から導き出された工夫やアドヴァイスをご紹介いただきました。すぐに使えるアイディアや、末永く心に留めておきたいヒントに、受講者たちは熱心に耳を傾けていました。
文:飯田有抄(ライター)
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