進化し続けるピアノメソッド、バスティン♪

【インタビュー】塚原利理先生(愛知県名古屋市)

2012年04月19日(木)

120525psp_tsukahara.jpgメールニュース巻頭インタビュー
第41回 塚原利理先生(愛知県名古屋市)
「脳とピアノを科学する!科学的ピアノ指導法とは」


2012年5月25日(金)開催の「バスティン・パーフェクトセミナープラス2012」の新企画、『科学的ピアノ指導法』の講師を務められる塚原利理(つかはら さとり)先生にインタビューしました。
5/25東音ホール 塚原先生講座情報はこちら


satoritsukahara.jpg◆まずは自己紹介をお願い致します。ピアノ指導、セミナー講師のほか、ヤマハさんにお勤めと伺いました。

塚原先生:

ピアノ指導歴は30年以上、全国で開催した指導講座・指導セミナーは1,000回以上にのぼります。ヤマハでのお仕事は、ピアノ自動演奏システムとミュージックデータを活用したレッスン指導を実験的にはじめたことがきっかけでピアノスタッフになりました。もう20年近く前のお話です。ですから、直近まで、ピアノ遠隔レッスンや映像同期レッスンなどの指導、またレッスンカリキュラムの構築にかかわっていました。数年前までは、東京高輪の本社スタッフなどを兼務しつつ、ヤマハPENスタッフ、PSTA普及スタッフとしての活動もしてまいりました。
現在は、名古屋大学の大学院博士課程で教育科学の研究を続けながら、ヤマハ中部エリアのピアノスタッフとしてさまざまなピアノコンクールにかかわりながら、講座講師としての活動を続けています。

◆ピアノ指導だけにとどまらず、ピアノ販売など営業との関係もおありなのですね。
塚原先生:

ヤマハという楽器メーカーでお仕事させていただいているおかげで、ピアノの構造やそれぞれの特長を知ることができました。ピアノの構造の知識が、いかに生徒の演奏やテクニック、成長に大きな意味を持ち、影響するかなど知識としてだけではなく実感として、日々の指導に役立っております。こうした内容を教育科学と認知科学(いわゆる脳です)と結びつけて、5月の東京講座でもお話しさせていただこうと思っています。

◆楽器メーカーにおられるからこそ、海外との遠隔レッスンも可能にする楽器、ピアノの「今」をつかんでおられるのですね。

塚原先生:

国内も海外も、宇宙以外はIT環境さえあれば遠隔レッスンができるんですよ。そう、将来は宇宙もOK!となるかもしれませんね。自動演奏ピアノという楽器は、すばらしい可能性、ピアノ指導のパラダイムを変えうる可能性を秘めていると思っています。


◆楽器メーカーの違いも含め、ピアノ構造の知識を持つことは、指導効率も、指導のアプローチも違ってくるのですね。

塚原先生:

はい、その通りです。そういった意味で、調律師さんは例えでよくいわれますように「ピアノのお医者様」です。だから主治医は大切にしないと・・・(笑)
「指導と演奏と楽器(ピアノ)」は「3つの矢」だと思っています。これからの時代の指導者は、それぞれをばらばらの知識として持つとか、あるいはひとつに特化した情報を持つ、またはバランスよく持つというような方向をめざすのではなく、この「3つの矢」を「統合(インテグレーションIntegration)」、つまり強く結び付けて持つことを目指すことが大切だと思います。これは、今回の講座のポイントのひとつでもあります。


◆楽器がハードとすれば、次はソフト(教本)について伺います。バスティンの魅力を教えてください。

塚原先生:

3つの魅力を感じています。

1)第一の魅力は、「プレリーディング」による読譜導入の重要性ですね。satoritsukahara02.jpg 今回の講座でも詳しくお話しするつもりですが、楽譜をはじめから「形」と「ポジション」でとらえていけるプレリーディングは、初心者が音楽と空間概念を結びつけていく上で大変重要な基礎能力となり、発達させることができます。また、楽譜を嫌がらずに「読める」ようになることは、早い時期から、自分の力でたくさんの名曲に出会っていける可能性につながります。この視覚と聴覚とからだの動きをスムーズに結びつけていけること(ちょっと難しく言うと「感覚運動性をスムーズに結び付ける」ということ)につながるバスティンの読譜の入口の確かさに、私は大きな魅力を感じます。なによりもバスティン教材を使用する数多くの生徒たちが「読めて弾ける」・・・これが実証していますね。

2)第二には、やはり「全調メソッド」の魅力でしょうか。
テトラコードとトニック・ドミナントの感覚が厭でも身につく、これはあらゆる調に転調できる能力の形成に結びつきます。しかも、これは四期を弾いていく上で欠かすことができない能力ですよね。私がピアノを習った頃と今とでは、弾く「曲」「プログラム」が全く違います。
どんどん時間がなくなる子どもたちに、どうしたら四期を弾かせていけるのか・・・先生方の悩みは深いのではないでしょうか。実際に「指導法研究会」などで先生方と質疑応答をしていると必ずこうした「お悩み相談」を受けます。「♯♭がたくさんでてきてお手上げ・・・」「バロックなんてとんでもない!」などなど・・・
全調が弾けるようになるだけがバスティンの魅力ではなく、調性のしくみ、すなわち「音楽のしくみ」を「どんな子にでも」「初級の段階で」「無理なく」わからせることができるのが、これまたバスティンの魅力と感じています。

3)最後に、弾けるようになっていくためのカリキュラムがしっかりなされている教材であるという点です。
これは「パーティーA~D」の魅力ですね。基礎定着に反復練習はかかせない要素です。それを楽しく、目先を変えながら、ていねいに反復できる。しかもとてもカラフルです。また、ワールドワイドなレパートリー曲は、現代の子供たちを惹きつける魅力が大きい。バスティンの剣士の入場をコンクールの課題曲にとりあげたら参加者が増えたということがありました(笑)。あらためていうまでもなく「数こなし」と「かみくだき方式」はバスティンの大きな魅力ですね。この点に関しては、講座の中で「バスティン指導内容の追求」としてお話ししていこうと思っています。

◆これまでたくさんのメソードに接してこられた塚原先生がおっしゃると説得力がありますね(笑)。教本のすばらしさに加えて、練習方法も大変重要な要素ですよね。講座のタイトルの「脳のしくみからピアノ練習をひもとく、科学的ピアノ指導法」について教えてください。

塚原先生:

satoritsukahara03.jpg あらゆる学問には指導するための教科書があります。ピアノレッスンはどうでしょうか。私たちピアノ指導者には、それぞれ企業秘密ともいうべき独自のノウハウを持っています。そうした各自の財産ともいえるオリジナリティあふれた指導法を発展させるためにはどうしたらよいのでしょうか?
今は教育も科学する時代です。ピアノ演奏とその習得も枠外にはありません。可能性を秘めた子供たちを、長期間にわたって音楽教育するという大切なピアノ指導者であればこそ、なおさら、現代の脳科学や運動生理学・教育心理学など科学的視点をとりいれたピアノレッスンが必要とされています。私の研究の一端をわかりやすくご説明し、指導実践へのヒントをお話します。

・・・と言いますと、もしかしたら「ちょっと難しそう!」と思われるかもしれませんが、けっこうおもしろい発見があると思います。「短期記憶と長期記憶のメカニズム」や「子どもの発達論」などを、ピアノ学習の観点から「わかりやすく、たのしく」お話ししたいと思っています。

◆脳のしくみも交えて、レッスンや日々の練習に役立つヒントをわかりやすくひもとく、この講座への意気込みをお願いします!

塚原先生:

意気込みは・・・「緊張している」でしょうか(笑)。藤原亜津子先生流で「弛緩(リラックス)」を心がけますね!

◆最後に、皆さんに伝えたいことがありましたら、お願いします。

塚原先生:

ピアノ導入の時期から「読める子」「弾ける子」を育てることの大切さを再確認していただき、この難しい時代だからこそ必要であると思われる、今の時代にふさわしい「想像力豊かな」生徒をたくさん育てる使命が私たちピアノ指導者には課されているのではないか、それはすなわち、ピアノ文化を広げることや、レッスン継続、一生ピアノにつながっていくのではないかと考えています。

こうした思いを受講していただいた先生方と是非共有したい・・・。
そのためには、まず効果的な指導法をそれぞれの先生が確立することであり、また、そこにとどまるのではなく、時代や環境の変化をキャッチしながら客観的に見直しや再確認し、今の時代に生きる生徒個人の特性にあわせて柔軟に対応していく必要があるのではないでしょうか。この「科学的指導法」での提案を先生方の「今あるレッスン」に生かして応用していただければと思います。

◆ありがとうございました。塚原先生のバスティン講座スケジュールは、下記予定されています。各地で皆様のご来場をお待ちしています。
 ・ 5/25(金) 東音ホール(東京都)
 ・ 9/24(月) 伊藤楽器 YAMAHA ヤマハ ピアノシティ船橋(千葉県)
 ・10/16(火) スガナミ楽器 多摩店(東京都)
 ・11/5(月) 有明楽器 健軍本店(熊本県)
 ・12/17(月) 伊藤楽器 YAMAHA ヤマハ ピアノシティ船橋(千葉県)
 ・2013年2/25(月) 伊藤楽器 YAMAHA ヤマハ ピアノシティ船橋(千葉県)

 《塚原利理 SATORI TSUKAHARA プロフィール》
つかはらさとり・・・国立音楽大学楽理科卒業。名古屋大学大学院 教育発達科学研究科博士課程(前期:修士課程)修了、後期課程専攻。私立カリタス学園女子小・中・高等学校でのピアノ非常勤講師を経て渡仏。91年音友ホール「室内楽の夕べⅠ」、94年東京サントリー小ホールでのピアノコンサート、「klavier・abend」、「モーツァルトの一日」等に出演。全国でのピアノ指導法講座・セミナーの実施数は1000回以上。ピアノを故仙波八重子、砂川啓子、J・ルヴィエ(91ニース)、音楽理論を島岡譲、音楽学を大久保靖子の各氏に師事。ヤマハ㈱中部エリアピアノスタッフ 現職。一般社団法人全日本ピアノ指導者協会(PTNA)正会員。PTNAステップアドバイザー。




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