【インタビュー】中野雅子先生(福島県郡山市)
2012年02月14日(火)
メールニュース巻頭インタビュー
第37回 中野雅子先生(福島県郡山市)
「いつも通り、頑張っています!」
東京都巣鴨のピティナ本部にある「東音ホール」で、月1回以上、中野雅子先生の姿をお見かけします。ピアノ指導法セミナーを受講されるため、福島県郡山市から上京されるのですが、2011年3月の震災後もそれは変わらず続いています。東日本大震災、そして原発事故からまもなく1年が経とうとしています。現在の福島県のピアノ事情と、子ども達の様子を中野先生に伺いました。
◆3.11後、子どもがいなくなった
昨年の3/11(金)、私の生徒達が通う福島県郡山市の多くの中学校は卒業式でした。2日後の3/13(日)はピティナ・ステップの予定で、地震が起こった時間はレッスン中でした。会場が避難所となり、ステップは中止になった訳ですが、郡山も場所によって被害は様々で、地震翌日には、レッスンを受けに来てくれた生徒がいたくらいです。
子ども達が町からいなくなったと感じたのは3/12、13くらいから。子ども達の半分は県外に避難、転校していきました。私は5日後からレッスンを再開し、4月からは今まで通りのレッスンを行いましたが、指導人生で「こんなに生徒が減ったことはない」と感じるくらい、小さい年齢の子どもがいなくなりました。周りの先生方の教室でも、平均10人くらいは生徒が減ったと聞きます。それが今も続いています。
◆「いつも通りできること」が力に
原発事故の影響で、子ども達が自由に外で遊べなくなり、学校や公園には皆さんが見たこともないような大きさのガイガーカウンターが設置されました。プールも運動会も中止になって、春と夏は季節を感じないまま終わってしまいました。子ども同士で遊ぶ機会が減ったためか、子ども達は幼くなったように感じました。そんな中、あるお母さんは「ピアノがあったから、何とかもちこたえました」と言って下さいました。こんな状況にあっても、ピアノレッスンという目標があったことは良かったのだと思います。変わらずレッスンすることで、そこに日常があることを確認できるのです。もう「何気なく」レッスンすることなど考えられなくなりました。
いつもお願していたお花屋さんがない、プログラムを頼んでいた印刷屋さんがなくなったと、今まで当たり前にあったものが無くなってしまった驚きの中、全国のバスティン研究会からのあたたかい応援メッセージに支えられ、5/3にステップを「これまで通り」開催できたことも、私達の自信になりました。夏には例年通りにピティナ・ピアノコンペティションが開催され、被災した子も参加するなど、人数は減らなかったと聞きます。「地震で何もなくなったけど、ピアノを弾いてたよ」という子ども達。親の不安や苛立ちが子どもに影響を与えることが少なくない中、健康面や精神面で無防備な子ども達の未来のために、私達大人がまず日常を平常心で過ごすことを大事にしたいです。
◆バスティン先生来日の感動と、決意
バスティン歴15年、サンディエゴのバスティン先生ご自宅訪問ツアーに4度参加しました。震災や原発事故で大変な目に遭い、前年2010年のバスティンツアーを振り返って、「行けるうちに行っておいてよかった」と感じていました。そんな中、昨年秋にバスティン先生が仙台に来て下さったことは大変な感激でした。同様に感じられたのか、驚くほどたくさんの参加者が集まっておられました。震災後は特に、その生徒がいつ教室を去ることになるかもしれないという思いから、大きなことを望み過ぎず、覚悟して指導していましたので、「今、目の前にいる生徒が、自分にとって一番の生徒」というバスティン先生の言葉が心にしみました。レッスンの中で、課題や悩みがたくさんありますので、私は今もセミナーや勉強会を学び歩いています(笑)。
そして、バスティンという、一つの教材を長く使い続けることで見えてくるものを求めようと決意しました。子ども達の成長は、1、2年では見えてきませんよね。子育てと同じですぐに結果を求めず、5、6年かけて見えてきた生徒の成長を通じ、指導者自身の成長を確認するのです。今は「どうしたら子ども達が心から笑えるか、そのために何ができるか」考え、子どもが今やっていること、人に見せたいことを共有する場を作って自信を取り戻してもらおうと考えています。
◆12回目の「ピアノパーティー」!!
私の教室は、毎年11月に「ピアノパーティー」という名前の発表会を行います。その名の通り、舞台にはたくさんのバルーンを飾り、ファミリー演奏、パーカッション演奏、イクメンの部など、お楽しみいっぱいです。バスティン先生のレッスンを拝見して、「ステージの上はディズニーランドのように楽しく、あそこで弾きたいと子どもに思って欲しい」と願うようになり、会の名を「ピアノパーティー」に変えました。先日の第12回ピアノパーティーには、震災後もピアノを続けた38名の生徒が参加し、お花代わりにバルーンを手渡すことができました。
◆バスティンの出会いはおもしろい
「バスティンを使っている子はどうして(音符が)読めて弾けるんだろう?」 その疑問を胸に、郡山ビューホテルの藤原亜津子先生セミナーに参加したのがバスティンとの出会いです。教材もさることながら、バスティン指導者の皆さんが各種イベントでお会いするたびに進化されていることを発見し、刺激を受けて私も学び続けようという気持ちになるのです。行動派仲間の先生がキャッチしたり、全国のバスティンネットワークから寄せられる貴重な情報を、いかに生徒に還元できるか考えています。
震災後、仙台バスティン研究会の武内園子先生が一生懸命セミナーやイベントをなさっているのを拝見して、一緒に頑張りたいという思いになりました。このネットワークに大変助けられています。仲間がいることで、パワーアップします。ぜひ皆さんにも、お近くのバスティン研究会に参加して、楽しく勉強を続けて欲しいと思います。
◆音楽は心の栄養
昨年秋のバスティン先生来日講座で、お弟子さんの原島怜くん公開レッスンの様子を見て、彼のすごさは、教え込まなくても10曲をさらりと弾ける力がついていることだと感じました。もちろんそのような素晴らしい力を自分の生徒にもつけてあげたいと思うと同時に、今は「教室に10年通ってくれる子、親子連弾できる生徒を育てたい」というのが目標です。私自身、指導のプロとして腕を磨きたいと思っています。現代の親御さんの中には、「保証」を求める方もいます。でも音楽は心のビタミンです。どの子にも同じように与えたとしても、違う風に育つこともあります。私達は教えるだけ、答えを出すのは子ども達です。音楽が好きになって一生続けて欲しい、と子ども達に願います。ピアノ指導者は、生徒が小さな頃から大人になるまで、どのように育つか成長を見守ることができるので、長いスパンで「見ていてあげること」「栄養を与え続けること」「優しく接すること」を大切にしたいと思っています。
また、ピアノ教室は、学校の成績とは別の視点で子どもに接することができます。お母さん方が感じておられるような子育ての不安についても、ピアノ教室が話を聞き合える場所、お母さん同士のネットワークが築ける場所になるといいな、と願っています。
◆最後に・・・
被災地の復興はまだまだですが、私達が今できることを前向きに行動することが大切だと学んだ一年でした。全国の先生方の応援は本当に力になりました。私達は守られているという安心感がパワーになりました。ありがとうございました。感謝申し上げます。
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