【インタビュー】セオリーチャレンジ舞台裏!開発担当スタッフインタビュー
2011年12月26日(月)
バスティン・セオリーチャレンジ Ver.0.5公開記念 開発担当スタッフインタビュー
前号のメールニュース巻頭でご紹介した「バスティン・セオリーチャレンジ Ver.0.5」。公開予定日の予期せぬシステム障害で、皆様にご心配とご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。現在はすでに復旧しており、ゲーム要素を通して、パソコンで楽典が無料で楽しく学べる「バスティン・セオリーチャレンジ」を多くの方にご利用いただいております。さっそく『フラッシュカードで1分間をなかなかきれなかった生徒さんに、自宅でゲームを試してもらったら次のレッスンの時に42秒でできるようになりました!』と嬉しいコメントもお寄せ頂きました。
今回は、この「バスティン・セオリーチャレンジ」開発を担当した東音スタッフにインタビュー。Ver.0.5が公開された後も、日々改良、進化に携わる3名のスタッフに話を聞きました。
※Ver.0.5公開後のスタッフ打合せ。
左から神原惠子、福田優子、竹内康夫
◆「セオリーチャレンジ」のおいたちを教えてください。
福田:ピアノ演奏の上達に欠かせない"基礎力"をしっかりと身につけるための『セオリー(楽典)』を忙しい日本の子どもたちに、短いレッスン時間の中でいかに効率よく取り入れ、しかも楽しくこなしてもらうかは、私たちスタッフの抱える大きな課題でした。
そして2年ほど前から、バスティンのセオリーは「紙のセオリー教材と併用できる、教育的なオンラインゲームでのアプローチがより効果的ではないか」という方向性がみえてきたのです。実際に自分の手で書き込んで覚えるという作業は必要不可欠ですので、紙媒体のセオリー教材は必須です。しかし一回書き込むと終わってしまいコピーをしたとしても、同じ問題しかできない。ですから、「反復練習しながら、どんどん違う問題をやりたい」というニーズを満たすには、オンラインゲームと紙のセオリー教材との組み合わせが最適なのではないか、という答えにたどり着きました。
実は、PSPやDSソフトのような売切り型のゲームソフト開発についてのリクエストも多く、検討したのですがその場合は一度買ったソフトに新しい問題を追加したり、現場の声を活かして改編したりできないことから、オンラインゲームにこだわりました。
「ゲーム」として一番最初に出てきたアイディアはフラッシュカードでした。もちろん紙媒体のフラッシュカードの良さもありますが、セオリーチャレンジを使うと自分で紙のカードをめくるより早いんです。そこから可能性が広がり、実現できそうなゲームアイディアがどんどん広がっていきました。
ゲーム化の流れとしては、まず私と神原さんでアイディアを練り、その絵コンテと仕様書を分担して作ります。具体的な素材(キャラクターや背景など)はイラストレーターの万里子さんに描いてもらって、その後、社外プログラマーに、今皆さんがご利用いただける形のゲームに作りこんでもらいます。そして、Ver.0.5からの新要素「ランキング」を含む、インターネットとゲームなど周辺を結びつける作業を竹内さんが担当しています。
◆開発にあたっての苦労話を教えてください。
福田:「せん」「かん」のように、画面上で素材の配置が重要になるゲームは、仕様書を作る段階で、素材の位置をXY軸で詳細に指定をしなくてはいけません。「この素材がX軸いくつY軸いくつ・・・次の素材は・・・」と一つ一つ配置の読み合わせをしながら作業をすすめました。スカイプを使って夜中まで自宅でこの作業をしましたが、本当に気が狂いそうでした!特に「はしごでアップダウン」は大変でした。
でもこんなに必死に作り込んでも「楽しかった!」だけでは何の意味がないので、本当にこのゲームで基礎力を身につけることができるのか不安でした。ですので今回実際にゲームを生徒さんにご活用頂いて、紙のフラッシュカードのタイムがぐんとあがった!というコメントを伺って、飛び上がるほど嬉しかったです。次はあれもやりたい!とますます構想が膨らみ、やる気が湧いてきました。
神原:プログラミングを担当される社外プログラマーには、どんなささいなことも「あとはお任せ」とはいきません。全て指示しなくてはいけないのです。しかも海外の方でしたので、指示の表現についてもかなり神経を使いました。日本語はお出来になりますが、音楽のお勉強はなさっていませんので、問題素材と解答素材を説明するにも時間をかけながら、お互いの意思疎通をしっかりと図ってすすめました。このゲームのお仕事は、ピアノ(音楽芸術)と正反対なデジタルな仕事で、1つの問いに対して1つの解答がありますので、いろんな脳を使う経験になりました。
他に、まだ開発中のゲームで、画面に出てきたリズムを流れてくる音楽に合わせて叩く「モンキードラム」がありますが、このリズムを叩くタイミングの「ずれの許容範囲」の設定が難しく、現時点ではまだ公開にはこぎつけていません。このまま日の目を見ないのも悔しい、と頑張っていますので、楽しみにお待ちいただければ嬉しいです。
◆思い入れのあるゲームは何ですか?
福田:企画の段階で皆で一番笑ったのが宇宙探検です。ゲームのオープニングで、左右からロケットが出てきて中央で合体する・・・という動きは、神原さんのこだわりなんですよ。
神原:提案した時、皆は大笑いでしたが「音価の足し算の問題だから」という意図があるんです。また、宇宙探検のスタートキーを押してからゲーム開始までに、キーボードの所定のキーに指を置くのですが、このロケットが出てくる時間がこの準備にちょうど良い時間になっています。実は皆さんの人気も、宇宙探検が一番です。
福田:ネイルアート(指番号)は、社内のシステムで二人で作った試作版では、妙にリアルな手の形、悲惨な色合いでとんでもないことになっていましたが、イラストレーターの万里子さんの描かれたイラストが素晴らしくて、今のような素敵なゲームになりました。このゲームで、爪を全部同じ色で塗った時と、2色以上を使って塗った時とで、完成時にデコレーションされるラインストーンのデザインが違うのをご存知でしたか?指輪の宝石の種類や、指輪をつける指も毎回違うので仕上がりのデザインは500種類以上になります。今後はこの仕上がりを「マイコレクション」として保存できるようにしてみたいですね。実際のネイルサロンとタイアップして、「マイコレクション」と同じようにしてもらえるようにするなど・・・アイディアが膨らみます。
神原:実は、福田さんがネイルが好きなので、こだわって作りました。高得点を狙う人は全部赤を選んで、次の回答が出る前に赤のところへマウスを動かすと一番早いです。でもネイルを楽しみたい方は、ゆっくりじっくり選んでいろんな仕上がりをチェックしてみてください。
いくつかのゲームの問題の組み合わせは35×何十乗倍・・・と、とてもたくさん。「はしごでアップダウン」は無限大ではないかと思います。ランダムな組合せなので、当初の「紙媒体のドリルだと問題数が限られる」といった問題はクリアされています。但し、和音の問題はもともとの種類が少ないので、出てくる順番は違えど、組合せは少ないです。が、ゲームを通して反復することで、子ども達は覚えてくれると思います。
◆ゲームに使われている効果音について教えてください。
神原:ネットで検索した色々な素材から探して選びました。特にお気に入りなのは、宇宙探検の「宇宙生物」(邪魔者)の「ウヒー」という声。あまり怖くない声、かわいい音にしました。福田さんは、この声をおうちで子ども達とマネっこ競争するそうです。もぐらたたきゲームのBGMは、追われる感のあるものにしました。ぴったりのものがすぐに見つかり、現在のものに決めました。すごく耳に残りますよね。
◆ランキングについて教えてください。
神原:これまで体験版として公開していた時にもランキングは表示されていましたが、単体のゲームごとのランキングでした。現在はレベル別に全ゲームの総合ランキングを出しています。もちろん、同じレベルであってもゲームによって難しさや得点が違います。(最高得点が30点以上のゲームとせいぜい5点くらいしか取れないゲームがあります。)これには、陸上の十種競技の計算式のようなものを取り入れて、難しさや得点平均が違うゲームをやっても公平にランキング計算に反映するようにしました。というわけですので、最高得点が30点になるゲームばかり頑張ってやらなくても、ランキングにはきちんと反映されますのでご安心下さい。
◆どうしたらレべル1をクリアできますか?
神原:現在の【Ver.0.5】では、レベル内の全てのゲームに挑戦し、なおかつ全てのゲームで基準点を超えた時点で、レベルクリアとなり次のレベルのエリアへすすめます。レベルが上がると、出題の範囲が増えてきます。というのは、レベルの1?4のエリアは、ベーシックスシリーズのレベルにほぼ対応しているからです。例えば、和音や調号はグループ???がレベルが上がるごとに増えていきます。また音程の問題はレベル1では1?3度まで、レベル2では5度まで、7?8度まで入ってくるのがレベル3になってから、4はこれから準備します。お楽しみに!
◆それぞれのゲームの遊び方について知りたいです。
福田:いくつかのゲームで、それぞれのカテゴリー毎のゲーム選択画面に、遊び方説明動画(YouTube)がリンクされています。ぜひご覧下さい。
◆ゲームの上手な取り入れ方について、提案はありますか?
福田:子ども達がのめりこむ心配はないのか、ということですよね。実は、私の息子がゲームが大好きで、親の私自身できればゲームをやらせたくない、とずっと思ってきました。でも、これからは教科書もデジタルの時代。おとなり韓国では来年2012年にすべての小・中学校に電子教科書を導入、日本でも2015年までに全ての小・中学校で電子教科書を配備する予定とか。それならば今のうちから利用時間やルールをしっかり決めて、上手につきあっていくのがよいのかな、と思うようになりました。最近は小学校でもパソコンを扱う時間もありますので、ゲームとの付き合い方は子ども自身がよくわかっていると感じています。
また、このゲームを通して得たことは、結局ピアノ演奏につなげていただいて発揮されます。弾くために必要な基礎知識、特に読譜力をつけるためのツールとして、お家で使っていただくことを目的としています。
先生のところで、家でもできる読譜の練習をしていたら貴重な時間がもったいない!!短いレッスン時間ですから、先生のところでは、読譜や基礎知識以上のことを学ぶために時間を使っていただくためのお役立ちツールと割り切ってお使いいただきたいと願っています。
◆セオリーチャレンジに込められた願いを教えてください。
福田:セオリー(楽典)は音楽の基本事項ですが、約束ごと、外国語、計算などもあって、子どもにとっては難しいものですよね。そこを拒絶反応を持たせないように、子どものやり方でクリアしてもらうために使ってもらいたいと願っています。セオリーチャレンジを通して音楽の基本を身につけ、表現や名曲へとつなげていって、音楽の楽しみを味わえる域まで育ってほしいです。
竹内:特に子どもはセオリーを分かってなくても、感覚で弾けたりゲームができたりするのがすごいと思います。理屈が頭に入らないと体が動かない大人とは違う。学習の仕方も年齢によって違うのだと感じます。
神原:先生方は生徒さんの表情を見ながらレッスンされることと思いますが、子ども達がノッていると感じる時はいろんな技を繰り出せますよね。楽しくノッてレッスンするためのツールのひとつとして、セオリーチャレンジをご活用いただければと思います。
◆ところで、「Ver.0.5」とはどういう意味ですか。
神原:バスティンホームページでは、Ver.0.5について「様々なニーズにお応えし、【バージョン1】へ向け、成長進化していく可能性をこめています。もっと、楽しく!ランキング機能も充実!」としていますが、未完成ということではありません。今回の公開は、皆様方から「こういうのが欲しい」「こういう力がつくゲームを考えて」等どんどんご意見ご要望ををお寄せいただいて、今後も皆さんと一緒に作っていくためのたたき台と考えています。いわば、キャッチボールのボールを投げかけた状態です。ぜひともこちらへ投げ返してください。皆さんが求めるられるもの、かつ質の良いもの、永遠に進化し続ける、セオリーの「ディズニーランド」を目指します!
◆では、バージョン1になる日がくるのでしょうか?
福田:1がゴールだと思っていないので、バージョン100くらいまで考えています!今回の【Ver.0.5】は、IT用語では『ベータ版』と呼び、正式版の機能を一通り備えた完成品に近い状態だがまだ開発途上で、性能や機能、使い勝手などをみなさまにお試し頂く版という意味です。作り込んでから完全な形で皆様にお出しするのではなく、途中でも皆さんからのご意見を反映しながら、よりよいものへ更新していきます。みなさまとともにバージョンアップを重ねていきたいと願っています。
◆お・ま・け
神原:最後まで読んでいただきありがとうございました。ここで裏ワザをひとつご紹介します。宇宙探検でスペースキーを連打すると連射できるのをご存じでしたか?とても気持ちいいですよ!また、宇宙生物(邪魔者)を早めに退治しておくと、後あと左右への移動が楽になります。
5音の指番号フラッシュカードは、指が少しでもキーボードに残っている(おされている)と×と判定されてしまうので、一回ずつ指をあげるように気をつけて下さい。
それでは引き続き、バスティン・セオリーチャレンジVer.0.5をお楽しみください!今後とも、バスティン・メソードならびに東音企画をどうぞよろしくお願い申し上げます。
※ご感想・お問合せがございましたら、
東音企画までお願いします。